『悪いものが、来ませんように』芦沢 央

『悪いものが、来ませんように』
芦沢 央

ネタバレ若干あり感想

母親と娘の愛情ものに私は昔からとても弱くて、この本も泣けてしまった
もちろんミステリーとしてもすごく面白いし、叙述トリックにもひっかかって騙される面白さもあった

もっと気楽に適当に生きればいいのに!
と、登場人物たちに言ってあげたくなるような作品。。。

すごく面白かった。

悪いものが、来ませんように

『悪いものが、来ませんように』
芦沢 央

ネタバレ若干あり感想

母親と娘の愛情ものに私は昔からとても弱くて、この本も泣けてしまった
もちろんミステリーとしてもすごく面白いし、叙述トリックにもひっかかって騙される面白さもあった

もっと気楽に適当に生きればいいのに!
と、登場人物たちに言ってあげたくなるような作品。。。

すごく面白かった。

『ラットマン』 道尾秀介

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記事には作品のネタバレを含みます。ご注意ください。

ネタバレありあらすじ

高校時代の同級生たちとアマチュアバンドを組んでいる現在30歳の姫川。メンバーはギターの姫川と精神科医を姉にもつボーカルの竹内と、警察官を父にもつベースの谷尾、それから唯一の女性、ひかりだったが、ひかりは二年前にバンドを止め、代わりにひかりの5才下の妹桂がメンバーとなっていた。

姫川は美人で影のあるタイプのひかりと高校時代から交際しているが、桂がバンドに加わってから、無邪気で屈託のないタイプでどことなく死んだ姉に似ている桂に心惹かれている。
姫川は幼い頃姉が死んだ事故やそのあとすぐに病気で亡くなった父のことで今も心に闇を抱え、母親ともうまくいかずに悩んでいた。

そんなある日、馴染みの練習スタジオでひかりが亡くなった。ひかりが亡くなったのは事故なのか殺人なのか、犯人は誰なのか

ネタバレあり感想

姫川の子供時代の姉が亡くなった事故の真相と、ひかりの事件の真相、二つを解き明かしていく話で、全体的に暗くさみしいムードがあった。

ひかりは妊娠していて、姫川は自分は避妊していたはずだからひかりが浮気したのではないかと疑い始める。そのため今までひかりのために抑えようとしていた桂への感情がつのり桂と寝てしまう。一方でひかりに殺意を抱く。
その描写のせいで犯人は姫川だとミスリードされた。
でもそんなに単純なはずないな、と思っていたらやはり姫川の行動はすべて桂を守るためのものだったことがわかる。そうか、桂が犯人だったのか、桂は姫川への愛情から姉が邪魔になったのか、と思っていたら、実は桂も犯人ではなく、真犯人は練習スタジオの支配人であった。

平行して、姫川の幼い頃の姉の死の真相も明らかになっていく。
実は姫川と姉は血が繋がっていなかった。
姫川は母の連れ子、姉は父の連れ子だった。
姉が父親に性的虐待を受けていたのではないかとミスリードさせる描写などのせいで、姉を殺した犯人は父親ではないかと思っていたが、途中実は姉を虐待していたのは母だったとわかる。そして姉を殺したのは母で父親は姫川が桂をかばおうとしたように母の罪をかばおうとして行動していたことがわかる。
しかしさらにどんでん返しで姉の死はそもそも事故だったことがわかる。現在の事件と過去の事件のエピソードがどちらも二転三転して、目まぐるしかった。

最後に一番思ったこと。
野暮なことかも知れないけど、姉妹の恋人を横恋慕する事って絶対に私にはあり得ないことなのでこのひかり、桂姉妹が理解できなかった。
節操がないな、と思ってしまう。
そんな感想は野暮だけど。

それからひかりと桂の父親に関するエピソードはあんまり関係ないような気がした。
ずっと行方知れずだった破天荒なドラマーだった父親に再会したと思ったらすっかり丸くなり普通の中年サラリーマンとなっていて、別の家庭まで持っていた。その姿に失望しひかりは自暴自棄になり、スタジオオーナーと寝てしまう。

一度寝ただけでひかりの気持ちまで手に入ったと思ったオーナーがひかりに拒絶されかっとなってひかりを殺したというのが事件の動機なのだけど、それもなんとも浅はかな動機だし、父親の変わってしまった姿に自暴自棄になるひかりも浅はかだった。

姫川自身も、避妊していたのに恋人が妊娠したと聞いて長年の恋人の話も事情も全く聞こうとせず、浮気だとすぐに決めつけたりして浅はかだった。(結局は浮気だったのだけど、レイプされたとかそもそも避妊に失敗したとか、可能性はあるのに)

姫川の母親も、いつまでも自分のことばかり考え息子の気持ちはどうでもいいのかとイライラした。

なんだか共感できない不快な登場人物が多かった。

それでも話自体はとてもおもしろく、すっかり騙されることができて楽しかった。

『フリークス』 綾辻行人

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記事には作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。

 

読んだことあったかな?なかったかなと思いながら買ったけど、やっぱり読んだことがあった。

そういうことを防止するためにもこのようにブログで備忘録として感想を書いていこうと思う。

今回は再読ではあったけどほとんど忘れていたのでもう一度楽しめた。

二回楽しめるのもいいけど、内容覚えていないというのはやっぱりもったいない気がする。

 

ネタバレ

精神病院を舞台にした3つの短編集。

ひとつ目は、入院している母親をお見舞いに来た青年の話。彼の出生時の秘密(実は双子であったが生まれる前に彼のへその緒が双子の兄弟の首に絡まり兄弟が死亡していた)や、彼が一年前に両親を殺害していたことなどが明かされていき、彼が犯行を看護師たちに自白する。彼が見舞っているはずの母親は実はもう死んでいて、彼の妄想の中にだけ存在していた。

実はそれは毎日行われている儀式であり、入院していたのはこの青年自身であった。

この青年は毎日自分の罪を忘れ、毎日母親を見舞い、そのあとで自分のしたことを思い出し自白する、という行為を繰り返していた、という話だった。

生まれる前にへその緒が双子の兄弟に絡まって、双子の兄弟が亡くなったというのは悲しい話ではあるけどそれをもって自分は生まれながらの殺人者だと悩んでしまうのはあまりに繊細すぎる。

そのことで悩んで病んでしまい両親を殺害したというのが動機なのだろうか。動機がいまいちわからない。狂人の犯したことと考えれば動機なんてないようなものなのかもしれない。

世にも奇妙な物語とかで取り上げられそうな話だった。面白かった。

 

ふたつ目は、ひどい交通事故にあい、大やけどを負い、両足を失い記憶まで失った主人公が自分の過去を思い出そうとする話。

夫婦で車に乗っていて事故にあったのだと説明されるが思い出せない。

顔に大やけどをおっていて包帯をまかれているので自分の顔が見えない。

自分は本当に死んだ夫の妻だったのだろうか?自分は愛人の方だったのではないか、と主人公は悩む。

顔に大やけどの描写が本当に怖かった。

自分の顔が元通りにならないほど損傷しているのではないかという恐怖の中で暮らすのはとてもつらいと思う。

そして、真相は主人公は妻でも愛人でもなく死んだと思っていた夫その人だったというオチだった。

とても驚いた。

主人公は事故で最愛の妻を亡くしたことと、男性器を失ったショックから自分を女性だと思い込み、死んだのは自分だと思い込もうとしていたのだった。

 

そしてさらに、主人公の妻と愛人は同一人物であった。夫婦の愛が冷めないよう妻が二役をすることで夫婦間に刺激をもたらすためだった。

 

いろいろな驚きがあり面白かった。

そして結局主人公のやけどは顔がすっかり変わってしまうほどのひどさだったというオチまでついてなかなか怖い話だった。

 

みっつめは、ある作家のもとに精神病院に入院する、自分を作家だと思い込んでいる患者が書いた小説が届く。

そこには、一人の醜いマッド・サイエンティストが、彼の作り出した五人のフリークスたちの一人に殺害された話が書かれている。しかし犯人は書かれておらず、作家が知人の探偵に犯人をあててくれと依頼する、という話。

 

なんとなく、読みながら、自分を小説家だと思い込んでいる患者というのはこの主人公じゃないのかな、知人の探偵というのは妄想上の人物じゃないのかな、というのは予想ができた。

 

作中作の犯人はフリークスの中で唯一背がとても低い、高いところにある窓から逃げることができなかったものが犯人だというのはわからなかったけど、ものすごく意外な驚きということではなかった。

 

不気味な話の中に不気味な作中作があり、こういうのがこの作者の醍醐味なんだなと感じた。

 

ふたつめの作品が一番面白かった。

 

やっぱり綾辻行人さんの本は面白い。

また新作が出るのが楽しみ。

『弁護側の証人』 小泉喜美子

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記事には本作のネタバレが含まれますのでご注意ください。

 

あらすじ

元ストリッパーの漣子(なみこ)という女性が財閥の御曹司八島杉彦と恋に落ち、玉の輿に。しかし、嫁ぎ先では義父や使用人になかなか受け入れられずにいた。ある日、義姉夫婦や八島家の主治医や主任弁護士などが集まって食事をする。その晩、離れに住む義父が何者かに殺害される。真犯人は誰なのか?

 

ネタバレあり感想

結構昔に書かれた話ということで、文体や内容に古いところがあり、そこが雰囲気があって良かった。

どんでん返しがすごい小説、みたいな記事で紹介されていた本だったので期待して読んだ。

見事、どんでん返しにひっかかった。

 

漣子のストリッパー時代の源氏名、ミミー・ローイというのがおかしくてそこがずっとひっかかった。ミミー、だけじゃなくローイってところがおもしろい。

この話は、面会室で漣子と夫が面会しているところから始まる。そこで漣子が夫に、「必ず新しい証拠を掴んで控訴して、死刑を撤回させてみせる」というようなことをいう。

 

この場面がこの作品のメイントリックになっていた。

死刑囚として捕らえられているのは夫だと思わせておいて実は妻のほうだった。という叙述トリック

なるほど、わかってからもう一度読み返すといろいろ違って見えて面白い。

夫の言った「いいかげんに冷静にならないか」というセリフも、最初に読んだ時は諦めの境地に達してしまった可哀想な男性の姿が浮かんだけど、真相がわかってから読むと恐ろしい。

 

漣子はかつてのストリッパー仲間に連絡をして、その仲間が弁護士を連れて来てくれる。その弁護士が控訴の手伝いをしてくれることになるのだけど、この場面も最初に読んだ時は漣子が外にいると思って読んだ。

あとから読むと、面会室での会話なんだなとわかって面白い。

 

結局、弁護側の証人とはかつて義父殺害事件を捜査し漣子を逮捕した張本人である警察官だった。彼が自らの誤りを認めて漣子の主張に耳を傾けて控訴審で証人として立ってくれる。

そしてそこで明かされた真犯人は夫であった。

 

第十一章で、急に被告人席に漣子がいるという描写があり、そこではじめて私はトリックに気づいた。

それもすぐには気付かず、時系列が違うのかな?などと思ってすっかり騙された。

 

他の人の感想などを読むと、ミステリーを読み慣れている読者ならすぐにわかる仕掛けだと書いている人も多かったけど私は全然わからなかった。

なのでとても楽しめた。

 

途中、漣子の妊娠がわかりしかもその父親が夫と知り合う前の男性であることがほのめかされたり、事件解決のあとまたストリッパーに戻ったり、漣子の性格に疑問を感じた。

夫杉彦は愛すべきダメ人間かと思っていたら本当のヒドイやつだった。

殺された義父が一番良識的で優しい人だったと思う。

 

八島家の主治医、控訴審の弁護士、ストリッパー友達など興味深いキャラクターがたくさん出てきてもっとその人達のことを読みたいと思った。でもこの小説はけっこう短いのでサラッとふれただけだった。

 

本の感想を記録する

ミステリー小説がわりと好きで、ちょこちょこ読んでいます。

読み終わったら古本屋さんに売ってしまうので、せっかく読んだのにどんな内容だったか忘れてしまったり、読んだこと自体忘れてしまうことも度々あります。

同じ本をまた買ってしまうことも...。

もったいないので記録として読んだ本の感想などを書いてみようと思います。